◆お芝居情報◆

【放送日】2001/06/21 【お芝居】天保四回シリーズ その壱 天保紫陽花(あじさい)心中

配役 出演者名
ご用聞き 金太 桜 金造
伊勢屋手代 和吉 えなりかずき
地本問屋 魁屋三右衛門 魁 三太郎
伊勢屋の娘 重奴 重田千穂子

お由美 野川由美子
町娘 お詢 石原詢子
貸本屋 浩吉 三浦浩一
お江戸でござる オリジナルソング
曲名浜唄
作詞たきのえいじ
作曲岡 千秋
石原詢子



●杉浦日向子のおもしろ講座●
江戸風俗研究家 杉浦日向子
加筆・編集・補足 長尾武之介



◆本日の良かった点◆

●千部売れたらベストセラー
地本問屋・魁屋三右衛門さんが
「千部売れたら千部振る舞いをしましょう」
と言っておられましたね。
人口・百二十万人もの大都市なのにたったの千部で大ベストセラーなのはなぜかな?とお思いませんか。
これには、江戸時代特有の本の流通システムがからんできます。
(システムとまで言うと、ちょっと大げさですが。(^^; )

天保年間当時、浩介さんの様な貸本屋さんが、江戸に約八百軒を超えたくらいたくさんいました。
貸本屋 (かしほんや)
寛永(1624~44)頃より現れ、江戸後期に全盛。
読書人口の増加に貢献した

今で言うと貸しビデオ屋ですね。
そういった貸本屋さん達が購入した本を、一般庶民の人たちがレンタルしてきて読むというスタイルが一般的だったのです。
それというのも、一冊の本の値段が高いということが上げられます。

武之介が所有しております「江戸物価事典」(展望社)によれば
書名 一冊の値段
好色一代男 25匁
宇治拾遺 活字 90匁
平家物語妙 3両2分
羽振りの良かった大工の日給でさえ「5匁4分」だったのです。
(詳しくは「大工」項参照のこと)
無論、全部の本がこれほどまでに高かったということではありませんが・・・
日給の一日分以上の値段の本・・・となると、流石に購入するには考えてしまいますよね。
そんな訳でレンタル商売の貸本屋さんが活躍するわけです。
そうなると一冊の本が何十人、何百人に読まれることになります。
つまり1000(部) × 10~1000(人)ということになりますと、大ベストセラーになってしまいますね。

千部振る舞いというのはなかなか無かったのです。
ですので、余程の快挙だったのでしょうね。


◆本日の間違い点◆

●売れないので返品する貸本屋
貸本屋・小間物売り
「小間物売り」
近世風俗志(一)』より
(喜田川守貞著、宇佐見秀機校注、岩波文庫、P267、1996/5/16)
(※「小間物売り」となっておりますが、文中に「貸本屋もこれに似ている」とあるため引用)

貸本屋さんです。
今回の浩介さんの様に、自分の背丈よりも高く積んで、いろいろな種類の本を商っておりました。
貸本屋さんは、今で言う貸しビデオ屋さんです。
それゆえ、借り手がいないからと言って返品はできません
貸本屋さんは自分の目利きでもって読者の好みに合う本を購入します。
もしその目利きが間違っていた場合は、自分が損をしてしまうわけです。
年月が経ったり、またどうしても人気がなく借り手がいなくなってしまった場合は、かなり値を下げて安く売ってしまいます。

また、貸本屋さんによって、それぞれ得意ジャンルが違ったそうです。
ミステリー物だったり、サスペンス物だったり英雄物だったり「里見八犬伝」のようなちょっとお堅い「読み本」系だったり・・・
でももちろんそれだけを扱った訳ではなく、今で言う「R指定」といった色恋物の本も取り扱っていたのです。
なんでも、本積みの下の方に忍ばせてあったそうで。(^^;
これで客の興味を惹いたりもしたそうです。

さて、たくさんの本の中からどれを借りるか?となるとちょっと迷ってしまう所です。
そこは貸本屋さんの方でもわきまえているらしく、「好きなの選べ」という売り方ではありませんでした。
お客の好みを把握していて、物語の良い場面の所を開いたりしてあらすじを読んで聞かせたりしました。
今で言うと映画の予告編みたいな感じだそうです。

その貸本屋さんは、三日に一度くらいの割合で来ます。
その時に本を返したりする訳ですが、返却延長などを望む場合は延長料金を支払います。
また、返す時に本に何かしらの不備(シミなどの汚れ、破れ、いたずら書き等)があった場合は、その分の追加料金を支払うことになります。


●大江戸出版本屋事情●

■本の販売だけでなく出版も担った地本問屋■
地本問屋
江戸名所図絵 上巻』より
(鈴木棠三・朝倉治彦校注、角川書店、p124-125、1975/1/10)

これは江戸で一二位を争う地本問屋の絵です。
(お芝居では魁さんの役でしたね。)
地本問屋 (じほんどんや)
絵草紙など庶民向けの娯楽本を出版販売した江戸の本屋
「地本」というのは、江戸で出版された本という意味です。
それ以前は上方が出版の主流を担っていました。
ですが、江戸後期になって江戸が随一の発信源となりました。

山積みの本
「山積みの本」
この地本問屋は日本橋通油町にあります。
間口もとても広く、本も山積みになるくらいたくさんありますね。
(左図参照)

この地本問屋でも貸本屋の時と同じように、自由に本を選んで読むことはできません
お客さんが注文した本を、手代さんや番頭さんが奥から持ってきます。
その時に、やっぱりあらすじ等を教えてもらいます。
それで、購入するかどうかを決めます。

貸本屋
「貸本屋」
こちらは貸本屋さんです。
(左図参照)
大きな荷を背負っています。
どうやらこれから商売に出かけるみたいですね。
重そうですけどもガンバって下さい。(^^

この地本問屋ですが、現代の本屋さんとは大きな違いがあります。
それは出版も手がけるということです。
『出版社兼書店』ということになりますね。
江戸時代の本屋は、販売だけではなく出版もして初めて一人前と認められた。
■柳亭種彦と偽紫田舎源氏■
地本問屋・鶴屋喜右衛門
「地本問屋・鶴屋喜右衛門」
お抱えの作家などもいました。
この地本問屋・鶴屋喜右衛門さん所では、大ベストセラー作家を一人抱えておりました。
かの有名な柳亭種彦です。
柳亭種彦(りゅうていたねひこ)(1783~1842)
武士でありながら戯作者として活躍。天保の改革で弾圧され、ほどなく病死した。

現在手元に資料がありません。
手に入り次第、掲載いたします。
『偽紫田舎源氏』より
(東京大学総合図書館 所蔵)

柳亭種彦は「偽紫田舎源氏」という作品を十三年間かけて三十八巻出しました。
この三十八巻全部がすべて一万部売れたそうです。
大大大ベストセラーですね!
そうなると、毎巻数十万~数百万人の人に読まれたわけ計算になります。
・・・江戸時代の人口をだいたい百二十万人ですから
ほとんどの人が読んだ
ということになりますね!凄い!!

この「偽紫田舎源氏」は、「源氏」の名の通り「源氏物語」をベースにしている大奥の色恋の話です。
絵の隙間に文章が書いてあります。
たいていは平仮名で、書かれてあります。
ゆえに、寺子屋(江戸では手跡指南)さえ出ていれば誰でも読めました。
(江戸の識字率は、大変高かったそうなので、みんな読めたことでしょう)

柳亭種彦の人気ぶりは、大変なものだったようです。
この連載途中に、種彦が病気だという噂が広まりました。
江戸中の女性達が「続きが読めなくなる」と先行きを心配しまして、平癒しますようにと願掛けを願ったほどだったそうです。

ネタにされている大奥のお女中さん達もそう願ったほどです。
多くの女性に人気のあった物語でした

●出演者への質問●

【質問:】本などは読みますか?

●石原さん●
こう見えましても、歴史物が凄い好きなんです。
【ALL:】へぇ~!!(゚o゚)
特に好きなのは、山岡荘八のが好きで。
織田信長とか。
●重田さん●
私はね、これっていうのは実はね・・・バイブルにしているのがあって・・・
サンテグジュペリの「星の王子様」。
もぅあれは昔読んだのと、また大人になってから読むと印象が全然違うんです。
そういう本ってありますよね?
わりと小さい頃に読んだものとはまた違う感覚っていうもの・・・
●三浦さん●
いやぁ~、困った。(^^;
僕はあまり本は読まない人間なんで・・・困ったなぁ~。
でも、池波正太郎さんの作品、鬼平犯科帳とか剣客商売とかをやらせてもらっている関係で、池波さんの本を読ませていただいたって、そういうのはあるんですけれども。
●えなり君●
推理小説が凄い好きなんです。
で、小説って映画とかと違って読むの想像するじゃないですか。
で、また小説読んだ人同士で話するのと、同じ映画を見た人同士で話すのって全然感じが違うんですよ。
がんばらないと読めないじゃないですか。
だから、なんかこぅ~話が弾んで、いい感じなんですよ。
で、有名な物語をいっぱいこれから、推理小説を中心に読んでいきたいな、と。
●杉浦先生●
【金】杉浦さんは・・・本を書く方をお立場ですよね。
まぁ一応、売れない本を~。(^^;
【金】読む方は?
ええ、読む方も好きなんですけれども、小説類が苦手でして・・・
子供の時に読んだのが「ファーブル昆虫記」と、大人になってからはコンラート・ローレンツという動物行動学者の「ソロモンの指輪」という・・・
あれが良い本で・・・。
●魁さん●
【金】はい、おじさん。(笑)
おじさんも意外かもしれないけどね、読むよ。
おじさんが今までで一番面白かったと思うのはね、「明日のジョー」だな。
【ALL】爆笑 (^o^)
それから後は「天才バカボン」。
これは面白かったね~。
●金造さん●
私も本はねぇ~・・・苦手ですね。
あの・・・恐竜図鑑とかね?ああいうのは楽しいですね。
あとね、やっぱりこう、UFOの本とかね。
あとはね、あっ!!これだけはいっぱい読んだっていうのはね、ダイエットの本。
【ALL】えぇ~!!なんでっ?!(゚o゚)
読むだけ読むんだけど・・・もぅ今日はこの辺で勘弁してよって。(^^;
実行しないから全然痩せないんですよ。
さっ、皆さんもたくさん本を読んで立派な人になりましょう。
また来週お会いしましょう~!!!(^o^)/~~

■参考文献■

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