◆お芝居情報◆

【放送日】1999/06/10  【お芝居】疑心暗雲を生ず

●杉浦日向子のおもしろ講座●
江戸風俗研究家 杉浦日向子
補足 長尾武之介



◆本日の良かった点◆

●金竜屋の暖簾(のれん)が良かった。
のれん 竜の三本の爪が玉をつかんでいる縁起の良いものでした。
屋号にもあっていて、とても良かったです。



◆本日の間違い点◆

●1500両も蔵にあるような店なのに、大番頭がいない!
1500両もの蓄えのある仕出し屋さんだったのだから、大番頭さんが必ずいるはすです。
そして、大番頭さんが蔵の鍵をきっちりあずかっているはずでしょう。


●手代の和吉が「和どん」と呼ばれていた!
「どん」がつくのは、小僧さんなのです。
小僧さんは、まだ前髪があります。
和吉には前髪がない手代さんの頭なので、和吉を「和どん」とは呼びません


●大江戸おかみさん事情●

■様々なおかみさん■
本日のお芝居では、後妻に入って店をのっとるというお話でした。
ですが、実際には非常に難しいと思われます。
今日のような芝居のケースのお年を召した旦那様の所に後妻が来た場合だと、旦那様が亡くなったら娘のお冬さんに入り婿をとって、そのお婿さんがご主人となります
ですので、女隠居となってしまって実権をとれないのです。
知能犯なら自分のコントロールのきくお婿さんを押し付ければ良いのですが、たいへん手間がかかります。
後妻=のっとり ということはなかなかできないことでした。

おかみさんの呼び方には、さまざまなものがあります。

身分 呼び名 説明
将軍・大大名 御台所(みだいどころ) 将軍様の奥様
御簾中(ごれんちゅう) 御簾の中にいらっしゃるという意味で・・・
御前様(ごぜんさま)
御主殿様(ごしゅでんさま) 主殿に住んでいる奥様
大名・旗本 奥様
御家人・上流の町人 御新造(ごしんぞう)
一般庶民 かかあ
山の神
下歯(したば) 御亭主が上の歯であって、夫婦二人して力を合わせないと一日の食にもありつけないくらいの・・・
化けべそ ちょっと悪口なのですが、愛着を込めた呼び方。
化けべその亭主は宿六(やどろく)と呼ばれました。
つり合っているということでしょう。
■おかみさんの風俗■
現在、手元に資料がありません。
見つかり次第、掲載いたします。
歌麿画 「咲分言葉の花 かかア」

歌麿の描きました新妻、若妻です。
綺麗な丸髷を結っております。
ですが眉をまだすっていないので、まだ結婚してから一年足らずというわけです。
お歯黒はしっかりつけていますね。
この新妻は20歳そこそこのまだ若い女性です。


現在、手元に資料がありません。
見つかり次第、掲載いたします。
歌麿画 「母子と丁稚」

こちらは20代後半の言わゆる「おかみさん」です。
小僧さんが、後ろで舌を出してあやしています。
丸髷に櫛をつけて黒のかけ入りをしていて、裾がかなり長い人です。
外出の際には腰帯でちょっとたくし上げますが、普段家の中では引きずっているのです。
ひきずっているおかみさんは、使用人がいるおかみさんという印です。
つい立てているおかみさんは、使用人がおらず、家事一切を自分でやっております
こちらのおかみさんの方が、かなり良い暮らしをしているいい身分のおかみさんですね。

■江戸時代はかかあ天下?■
江戸はずっと女性の人口が少なくて、8代将軍吉宗の頃でも男女比率が2:1だったそうです。
単純に計算すると、男半分があふれてしまうわけですね。
上流のお金持ちの層の人が複数の女性を独占していますので、下の方まで回ってこないのですが。(^^;

江戸は女性がもてまして、さらに女性の選択肢が広いのです。
女性が男性を選ぶわけです。)
それで今回のように、三次さんが一方的にプロポーズすることは、かなり自分に自信がある男性でした。
江戸の女性から見たら、あつかましいタイプと見られてしまうでしょう。
相手の気持ちを考えないということは、まずありませんでした。
(絵のような色仕掛けをする必要がなかったようです。)

江戸の男性はひたすら待って、ひらすら耐えて、ひたすら尽くす

結婚の最初の時に
『三行半をもらうという事を条件に結婚する』
という女性もいたそうです。
つまり、いつでも嫌になった出ていってしまいますよ、という事です。
で、その別れた後の女性はというと、引く手あまたですからね~・・・。
上流のお金持ちは選り取り見取り。
でも庶民は、ドリームジャンボが当たったくらいうれしい事でした。(^^
三行半、三下り半(みくだりはん)
江戸時代、夫から妻に出した離縁状の俗称

結婚式ですが、庶民はだいたいが人前婚です。
隣近所の人たちなどをたくさん集めて、大家さんに認めてもらいます。
おこわとお酒を振る舞うくらいで、それほどの出費はないのです。
それでもたくさん呼ぶのが義理ですから、その上で別れてしまうことは恥をかいてしまうということでした。


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