◆お芝居情報◆

【放送日】1999/06/03   【お芝居】後継ぎ先に立たず

●杉浦日向子のおもしろ講座●
江戸風俗研究家 杉浦日向子
補足 長尾武之介



◆本日の間違い点◆

●「和吉を養子に迎えられない時には、お店に火をつけて我が身もろとも・・・」とありましたが・・・
江戸は火事に対しては敏感な町なので、冗談でも火をつけるということは禁句です!!
しかも大店の旦那様なのだから、似つかわしくない台詞でした。


●大江戸子供事情●

■江戸の迷子捜しと迷子石■
江戸は人口100万~120万という都市なので、はぐれやすいです。
それに諸国の吹き溜まりとして人々が入ってきたので、そういう所から迷子は頻発に出るところでした。
それで、迷子対策の一つとして、迷子石という物が各地に設けられました。
油島天神に嘉永三年に設けられたものです。
他にも、浅草浅草寺などの人の多く集まる場所に設けられました。
迷子を捜す時には、この石を目当てにして来ます。
迷子石は油島天神のほか、一石橋のたもと、浅草寺などにもあった。

現在、手元に資料がありません。
見つかり次第、掲載いたします。
「東都遊覧年中行事」

迷子石について、別の資料がありましたので、代用いたします。
一石橋の迷子石
「一石橋の迷子石」
大江戸ものしり図鑑』より
(花咲一男監修、主婦と生活社、p50、2000/1/4)
絵の中の石の左上の石の片側には、「を志ゆるかた」と書いてあります。
この反対側には「たずぬるかた」と書いてあります。
「私のところで、このような子供を預かっています。」
という内容の紙を「を志ゆるかた」の側に貼り付けていきます。
反対側には「たずぬるかた」ですから、子供の人相や特徴を書いた紙や、
「この子供探しております。」
などの内容の紙を貼りつけておきます。
それで心当たりのある方が毎日ここを見に来ます。

この石ですが、篤志家(とくしか)が自費を通して匿名でたてました。
湯島天神の最神の迷子石は篤志家が匿名で建てたため、庶民の評判をよんだ。

両親と会えない子供は、その見つかった町内にて育てます
その費用として、町入用(ちょうにゅうよう)という町内経費を割り当てました。
これによって面倒を見る、または親御さんが見つかるまで養育するということでした。
迷子は町入用(地主の負担する町の経費)を使って町ぐるみで育てた。
今回のように寺で預かったり、町の有力者が実子のように自分の家に入れて養育したりと、決して迷子だからということでたらい回しにはしませんでした。
(また、そんなことをしてしまうと、町の恥になってしまいます。)
■子供達の教育■
普通の子供達は寺子屋に通いましたが、上にあげたような迷子達にも、きちんと寺子屋にも通わせました。
希望すれば、お稽古事にも習わせます。

江戸は特に中期以降、少子化が進んで子供を欲しがる人が多かったのでした。
それは、江戸は職業婦人が多くて晩婚の方がたくさんおりましたので、養子の口には困らなかったそうです。

現代のように、養護施設にまとめて保護するということはありません。
一つの家が責任を持って、町内会の経費をいただきながら育てます。
「子宝」といいますが、それは両親や家にとっての宝ということではありません。
町の共有財産という「町の宝」という考え方でした。
それゆえ、町中の大人の目が光っております。
子供が夜遊びをしようものなら、町内の者からしかられます。
両親が帰ってこない場合は、近所の家が食べさせてあげるということがしばしばでした。


当時は、大人が子供を押さえつけるというやり方ではありません。
子供の自主性を非常に尊重していて、子供同士の社会を認め合っていました。
その中では、年長者の子供が年少者の子供を導いていくという意識があります。
そんな事だったので、ことわざにもある
「子供の喧嘩に親が出る」
ということは、本当に恥ずべきことでした。
子供同士で解決しなさいということです。

子供の遊び場ですが、一番安全だったのがお寺さんや神社の境内です。
そうすれば、ちゃんとおやつにもありつけますし、物知りの和尚さんにいろいろ教えてもらったりすることができました。
現代の子供は家の中に閉じこもって遊びましたが、当時は鍵なんてものはなかったので、「鍵っ子」なんて言葉もありません。
物騒だとは思いますが、町内における信頼関係が鍵となっております。
町内に不信な人がいたら、みんなが目を光らせているので空き巣も難しかったそうです。
すばらしいシステムですね!

江戸の子供が親に一番うるさく言われることですが・・・
親に限らず町内の年長者や寺子屋のお師匠さんに一番言いつけられたことは、
「たったの5つ」
なのです!
「おはようございます」
「こんにちは」
「こんばんは」
「ありがとうございます」
「ごめんなさい」
以上の事を言われたそうで、これができればOKでした。
たった5つといいますが、たったではすまされない言葉ですね。

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